2008年12月26日
Posted by {^L^} at 2008年12月26日20:33 Comment(2)

大鯛鍋@あじみなと番所

大鯛鍋@あじみなと番所


★先日、穴子鍋でBlogに書いたばかりの庵治港番所さんですが、明日12月27日夕方16:55から放送
 のKSBドリーム百貨店に登場します。 小室早弥香アナがどんな食べっぷりをするか楽しみ
 ですね。 放送を記念して、以前{^L^}が食べた時の日記を再UPします。 興味を持たれた方
 は明日土曜日の放送を見てください。


あじみなと番所 専修院

セカチューの冒頭の葬式のシーンは、この寺で撮影された。 晴天の中一日がかりで水を溜めて
あの雨のシーンを撮影したそうだ。 撮影中はこの寺が基地となり、森山未來君もうどん打ちを
手伝ったりして待ち時間を過ごしていたそうだ。

庵治に秘密の料理屋があると言う話は10年以上前からグルメマニアの中では噂になっていた。
しかし看板も無い、紹介者がなければ予約も受け付けてもらえない難所で、世に知られることは
なかった。

映画のロケで訪れたのであろう、西田敏行などのお気に入りだと言う話である。

しかし、セカチューのロケ地になった事で状況が一変した。 恋人の聖地となった庵治の漁港には
大量の観光客が押し寄せるようになった。 代々続く網元の屋敷を禅寺として使用している専修院
は併設の、あじみなと番所を観光客のための食事処として解放した。 

檀家を持たない専修院は、幾ばくかの収入を得ないといけない訳で、そのために番所が開設されて
いるわけだ。 

【 セカチューの裏話が聞けます 】の看板につられて食事に立ち寄った観光客に、セカチューの
撮影の様子等を語りながら、道主 西村嘉明氏の生死感も語られ、言わば、法話の役割も果たして
いる。

元々、映画の撮影に寺を解放する等、微塵も考えていなかった西村道主が、行定勲監督の生と死
の概念に共感して撮影に協力した訳だが、そのあたりの逸話を聞くと、自然と西村道主の死と言う
ものに関する考えかたがよく分かる。

映画の中で、墓から遺骨を盗むシーンやオーストラリアで遺灰が風で飛んでいってしまうシーンの
解説で西村道主の死と言うものへの考え方が披露され、私もそれなりに共感することが出来た。

もしセカチュー絡みでなければ、話に共感する事もなかったであろうし、ましてや法話を聞くと
言う事自体もなかったであろう。 

そう考えると、この番所での西村道主のお話と言うのは、とても効率の良い禅寺の活動と言う事に
もなる。 普通、禅寺の門を叩く人は、それなりの宗教研究家である場合が多い。 すくなくとも、
禅と言う物に興味があるはずだ。

しかしセカチュー巡りをするカップルは、そんな事は 1%も興味が無い。 そう言う人たちが
宗教家による映画の解説を聞くと、とても新鮮に感じることだろう。 

もちろん私もそうだった。 西村道主のお話を聞いた後に、セカチューを見直すと以前の 3倍は
楽しむ事が出来た。

逆に、当時毎日ここで食事をした行定監督にも西村道主の影響は少なからずともあったと思える。

そんな事を考えながら、セカチューのビデオを見直すと、シーンごとに、あれこれ行定監督の
埋め込んだ思想が垣間見えて来るようになり、まさに映画の醍醐味を味わえる。

私は禅のことはまったく分からないのだが、やはり人間の人生で最大の出来事、死に対しての
考え方は、人の一生で一番長く続く課題だ。

20代、50代、80代ではそれぞれ考え方も違ってくるはずだ。 西村道主の話を聞いて、私も禅と
言うものに少し興味が湧いた。 少なくもと禅の形を取らずとも、人生は死ぬまで修行をしないと
いけないと言う考え方になった。

まあ、このBlogは料理やお店を紹介するのがメインなので、禅に関しては、各自実際に専修院を
訪れ、開眼して欲しい。

しかし西村道主は魅力的な人だ。 観光客でさえも、この坊主は只者ではないと感じるであろう
が、地元で西村道主の経歴を知る者に取ってはなおさらだ。 

お生まれは台湾だそうだが、祖先は松平藩の士族だ。 庵治に船番所を開設し海上警察のような
仕事をされていた家系だそうが、明治の廃藩置県以来は珊瑚採取業に転じられた。

我々の知るところでは、ライオン通りの西村珊瑚店が西村道主の昔のお仕事だ。 本業の傍ら
西讃の大物議員の秘書として、東京と高松を往復しながら活躍されていた。 80年代になって
参禅修行を始められるのだが、もしそのまま政治活動をされていたなら、今頃は香川を代表する
政治家になったと思われる。

禅の道での活躍も目覚しく、1991年には塩江の大滝山に専修院を建立されて修行の道を極めて
いる。 著書には 1996年出版の【 生きる、我が托鉢日記 】がある。

まあこれぐらいの予備知識を持って、食事に出かければ、西村道主との何気ない会話のなかに
あなたの、一生のヒントを見つける事ができるかも知れない。 くれぐれもただの坊主と
思って油断する事の無いように。  

さて今回は前フリが長くなってしまったが、それは写真の鯛鍋料理がシンプルな味付けなので
あまりうんちくを書くネタの余地が無いからでもある(笑)

シンプル且つ大胆としか言いようの無いこの大鍋料理だが、まず母屋の座敷で待つ客の前に
3キロ以上の大鯛が運ばれてくる。 長さで言うと70cmぐらいだ。 釣りをしない人は重さで
大きさの概念が湧かないであろうが、普通に魚屋で並んでいる鯛は 1キロ前後だからいかに
この鯛が立派なものだか分かるであろう。

こんなでかい養殖物は当然存在しないが、天然鯛である事は、この美しい色合いをみれば、
素人でも分かる。 このあと、客は食事の場所の160年前に建てられたいろり部屋に移動する。

ニジリ口のような入り口から入るいろり部屋は、いやがおうでも食欲が湧いて来るゆるい空気
の流れる部屋で、壁にはセカチューのサクと亜紀の結婚式の写真が飾られている。

いろりの大鍋には、大根や、芋、人参などがすでに入れられて、主役の大鯛を待っている。
いよいよ大鯛が運ばれて来ると、待ちかねた客人からは、どよめきの声があがる。

鯛の次には、藻海老が入れられる。 海老はすぐ出来上がるので、海老を食べながら鍋が
出来上がるのを待つ訳だ。 前菜には、鰹のタタキが用意されていたが、にんにくを使わず
に料理されていて海草とあわせて食べると美味しい。  

なにしろ肉厚の鯛なので、なかなか煮上がらないが、その間には西村道主の面白い話も聞けて
退屈することは無い。

今日は、美空ひばりが、香川で鯛を食べて、その鯛の骨をお守りにもらった後に、高知へ
移動中、今の大豊町でバスが転落事故を起こし九死に一生を得た話で盛りがった。

この骨は、鯛の胸ヒレの付け根の骨で、【 鯛の鯛 】と呼ばれる物だ。 形が魚に似ている
ので、鯛 in 鯛と言うわけだ。  芸能人は皆この美空ひばりの逸話を知っていて、番所を
訪ねる芸能人は皆、このタイのタイを持ち帰る事を所望するそうだ。 



話が盛り上がったところで、タイミングよく鯛が出来上がる。 味付けが大滝山の湧き水と、
酒と醤油だけと言う事で、とても透明な味だ。

鯛の甘味や野菜の甘味がよくしみ出ていて、とにかく汁が美味しい。

汁は後になる程、だんだん濃くなってくる。  野菜が煮詰まってくる事もあるが、鯛の肝
も溶け出してくるからだ。

あまり慌てて食べると、出汁が美味しくなった頃にはお腹が一杯と言う事になってしまうので
ペース配分には注意しよう。 

出汁の味が単調になって来たら、柚子こしょうを入れて食べると良い。 最初は無しで、段々
入れる量を増やさないと、最初にたくさん入れすぎると、舌がぼけてしまうから要注意。

市販の柚子胡椒ではなく、番所の自家製なので辛いだけで無く香りも格別だ。

鍋の中には、ゆで卵も入っている。 これは鯛の浜焼きと同じで、子孫繁栄の縁起物だ。

鯛を平らげると、締めはうどんだ。 もちろん西村道主が手打ちしたものだが、今日食べた
感じでは、2年前に比べると道主は腕を上げたようだ。

手打ち麺だから、煮込まずにどんぶりに入ったうどんに大鍋から出汁をすくって入れて食べる。
なんとも豪華なうどんだ(笑)

ここまでが、貸切の一卓 8名分で 29400円と言う破格値の番所の鯛なべだ。 遠来の親戚を
もてなす場合は、この鯛なべの前に、茶室を借りて茶席を設ければ完璧だ。 

まあ破格値とは言え、29400円となるとそう簡単に利用する訳にも行かないだろうし、8名の
メンツをそろえるのも大変だ。 予約の要らない、昼の料理も紹介して置きたい。

注: 現在穴子うどんはつけうどんで供される。


幾ら西村道主が禅の達人とはいえ、うどんとなると数多くの先達の前には敵わない。ここで
飯山なかむらや、谷川米穀店のようなうどんを期待してはいけない。 

今日食べたうどんは、かなりレベルが上がって来ていると感じたが、うどん以前に、禅寺の
出汁の味付けは俗世界とはかなり違うようだ。 西村道主がスローフードにこだわって
化学調味料・防腐剤を一切使用せず、出汁を取るのも、いりこではなく、小魚の干物を炭で
炙ったものを使用している。 

とにかく日頃食べている出汁とはまったく違うので、この手間隙かけた天然素材から生まれる
出汁がどれぐらいすばらしい物か、まだ人に語れるほど、俗世が抜けていない。

これは決してまずいと言っているのではない。 化調を使わないうどん屋なら県内にも沢山
ある。 しかし商売として成り立たす為に、どの店も苦心して化調を使用しているお店と
同じようなインパクトのある出汁を目指している。

ところが、禅寺の目指す味は、インパクト等まったく関係ない、素材のもつ本来の味わいを
追求しようと言うものだ。 まず化調に慣れた体から慣らさないといけないようだ。
たぶんこう言う食事を続けていると、1~2ヶ月もすれば、化調の入った出汁など受け付けない
体になるのであろう。

この話は、長くスペインで自然派の生活をし、帰国してもなお自然の食品しか口にしない、
屋島のディエゴさんの奥さんからも聞いた事がある。  日本のファミレス等で食事すると
体調が悪くなるそうだ。 

そんな中、穴子うどんは一番、俗世に近いうどんだ。 まずはこの穴子うどんを食される事
をお奨めする。 うどん以外にも穴子の蒸篭むしご飯などもあり人気だが前日に予約が必要
なのが残念なところだ。

前述のように、とにかく番所は、うどんを食べると言うよりは、西村道主のお話を聞くのが
最大のお奨めポイントだ。 うどんを食べている時に西村道主を見かけたら、ぜひセカチュー
のお話をしてもらおう。 貴方の食べたうどんは一生心に残る一杯となる。

注: 現在メニューの構成と値段は一部変更となっている。


専修院 あじみなと番所  お店のHP
             西村道主Blog   
             BigLobeの鍋の番組(動画) 
             12月10日の穴子鍋の日記(動画付き)

世界の中心で愛を叫ぶ   ロケ地ガイド
住所: 香川県高松市庵治町6368  地図   
電話:  087-871-2026 
営業日  不定休 毎月最終日曜のみ催事の為休み  ★2013年より 火曜日定休
営業時間  11:00~



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この記事へのコメント
先週末、ようやく鯛願、いや大願が叶い、
大鯛鍋を食することが出来ました。

4.3キロの今年1・2番に大きい鯛だそうで、
眼前に差し出されると皆の眼が真ん丸に。
旨々と8名が食して満々腹となっても鍋は
空になりませんでした。(立派なエビも一人
10匹弱はあったような)

日本酒も金陵の特注?品を、丁寧に人肌燗で
出してくれて、香りよく、いくら飲んでも飽きずに、
だいぶ酔ってしまいました。

参加者からは、いい思い出になったと高評価で、
幹事としても顔が立ちました。

いい情報をありがとうございました。
Posted by 楠上鳥 at 2012年02月12日 00:39
楠上鳥 さん>

寒い中行かれたんですね。
4.3kgはデカイハマチぐらいの重さです。

なにげにあの玉子が美味いんですね。
鯛の鯛は発見されましたか?

最近冷や酒が多いですが、鍋にはぬる燗
が良いですね。

3月にはいかなご鍋が食べられるので
またお昼にご一緒しましょう。
Posted by {^L^}{^L^} at 2012年02月13日 01:06
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